「ハンア・アーレント」
「ローザ・ルクセンブルク」を見たのは、20年以上前。でも強烈な印象を感じました。1900年という世紀の節目、寒い空の下、自分の信念を貫く姿は、美しくもありまた苦しいものでした。
同じ監督。女優が作ったのが「ハンナ・アーレント」です。
ユダヤ人のハンアがイスラエルで行われたナチのアイヒマンの裁判を傍聴し記事を書いたことを中心にした作りになっています。「凡庸な悪」を唱える彼女に、ほとんどの友人のユダヤ人が反対意見を述べるうえ、世論のほとんども彼女を糾弾するというくだりが凄い。
ここには、実際に被害を受けた当事者が気持ちの折り合いをつけるために「絶対的悪を体現するモノを罰すること」を求める気持と、起こった事象を客観的・科学的に分析しようとする視点の擦れ違いがある。この二つの見方は、決して交わることは無く、折り合うことはできない。
そして、「凡庸な悪」とは、誰もが「悪」になることを意味し、それは映画の登場人物のみならず、観客である私達に付きつけられる問題でもある。
この映画がどこまでノンフィクションなのかは知りませんが、最後の講義のところで、古い友人が「君は傲慢な人だ」と言って去っていくシーンは、普通の所謂「ヒューマンドラマ」なら「やっと君の意見を理解することができた」と和解するところ。でも、そうはならず、マンハッタンの夜の闇の中で孤独に思考し続ける彼女の姿は「美しくまたあまりにも苦しく辛い」のもでした。
0 件のコメント:
コメントを投稿