「さよなら、アドルフ」
第二次世界大戦末期のドイツの黒森の豪勢な館の主はナチスの高官一家。敗戦が決まると、父親に次いで母親も出頭していき、残されたのは5人の子どもたちだけ。村人たちも自分たちが生きていくので精一杯。子どもたちはハンブルグの祖母の家を目指して歩きだ…という物語。
ある日を境に価値観が一変し、自分のアイデンティティが崩れていくことを経験する少女の姿を通して描かれるのは、とても整理されることのない難しい問題です。
正義は一つではなく、また、個々の人間にとって「今、目の前の状況」を解決するとき行使される力・選択は、正義とは違う次元の判断で行われていく。
鬱蒼とした緑の中で美しい夏のドレスで走り回る姿の無垢の美しさが、最後、解決不可能の広い世界へ投げ出されていく様子は哀しく辛い。彼女たちの将来が、決して明るくないことが暗示される故に悲しみは深まり、人間存在の罪を意識させられます。そして、正体不明の青年の行く先も…。
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