2017年5月9日火曜日

本:『狂うひと 「死の棘」の妻・島尾ミホ』梯久美子(新潮社)

『狂うひと』
昨年秋の書評で多く取り上げられた本。ようやく手に取りました。
『死の棘』は読んでいませんが、映画になった時等、話題になりましたので、なんだか読んだような気になっていました。その後、BSのTV番組「わたしが子どもだったころ」でしまおまほの子どものころのエピソードを見て、「こんな家-家族-に生まれたら…」と思いました。確か島尾ミホのことも語られていたように思います。
ということで、読んだのですが、何しろ600ページを超える作品です。序章はすぐ読めたのですが、第一章が苦労しました。第二章からはどんどん読み進むことができ、第九章以降は結構没入して読みました。
感想は「こういう人生って…大変!」という一言。あの時代ということもあるのでしょうが、様々なハードルがあったわけで、それを乗り越える原動力は一体なんなのかと考えさせられました。一つには今より情報の少ない時代でしたし、文士という存在が現在のアイドルのような存在だった時代だったのだということが大きいと思いました。「書く人」というのは、表現者として一つ上の存在だったのではと思うのです。そして、戦争という極限状態。その状態がもたらした価値観から抜け出すことを希望するか否定するか…。
著者の梯久美子さんの本も他には読んだことが無いのですが、徹底的に島尾作品・関連書籍・残された資料を読み解き、関係者に話を聞いて歩く様子は、すごいと思いました。そして、その誠実な態度にも。
それにしても昨年読んだ『漂流』も南の島の話でした。いにしえからの人の営みが残っている地には、私たちの思いもつかない複雑でありながらシンプルな人間の業があるのでしょうか。


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