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2026年8月29日土曜日

本:『急に具合が悪くなる』宮野真生子 磯野真穂(晶文社)

『急に具合が悪くなる』晶文社
カンヌ映画祭出品映画の原作ということで読みました。かなり前に出版された本です。読み始めは…とっつき難いという印象。この二人は、例えば幼馴染とか、青春を共に過ごした親友とか、そういう関係じゃない。とある研究会でふと知り合った二人、でも「この人だな」と感じて文通を始めたとのこと。その時点ですでに宮野は「急に具合が悪くなることがありますよ」と医者から伝えられいた由。だから、最初の方はまどろっこしく進む。どこか遠慮というか、探り合っている様子。だから、読み進むのが躊躇われるというか、中々ページが進みませんでした。半分を過ぎたあたりから、がぜん興味深く読み進められるようになるのは、ふたりが研究者として「客観的に話し合っていこう」という形をとるからでしょうか。「この問題を多面的に語り合おう。行きつ戻りつでも、でも前に進もう」という姿勢が心を打ちますし、書かれた議題に惹かれます。「濃密な語らい」でしょうか。言葉を尽くして思いを伝えるということを思いました。

2026年4月24日金曜日

本・『続 遠慮深いうたた寝』小川洋子(河出書房新社)

『続 遠慮深いうたた寝』小川洋子(河出書房新社)
『遠慮深いうたた寝』に続くエッセイ集(新聞等に載った短いもの)。小川さんの創作の秘密を覗き見るような気分になれますし、紹介されている本を読みたくなります。装丁もすてき!

2026年4月20日月曜日

本:『カフェーの帰り道』嶋津輝(東京創元社)

『カフェーの帰り道』嶋津輝(東京創元社)
直木賞候補作になった時の紹介文を読んで、即図書館で予約。その時すでにかなりの順番待ちでしたが、その後受賞されたので今はかなりの順番待ちです。また、その後NHKの朝の番組で著者が紹介され、ますます興味が湧きました。小さな世界を描いているようで、その後ろの時代・世相を感じる作品です。以前、森まゆみさんの大正と戦前の昭和に生きた女性たちの評伝集を読んだことを思い出しました。評伝は有名な方々が多かったのですが、この小説に出てくる女たちは密やかに生きた人々です。掌で温めたいような生き方ばかりでした。この著者、これからもきっと作品を生み出せる方だと思います。がんばれ!

2026年4月11日土曜日

本:『研修生 プラクティカンティン』多和田葉子(中央公論新社)

『研修生 プラクティカンティン』多和田葉子(中央公論新社)
昨年大阪で観た塩田千春の展覧会で、この新聞連載小説のことを知りました。多和田葉子+塩田千春という「ベルリン在住」の組み合わせ!読売新聞を購読していない身としては、単行本になるのを楽しみにしていました。1982年のハンブルグ、まだドイツは東西に分かれていて、世界は60~70年代の若者の熱気を残しつつ、どこか浮かれた物質主義(日本ではバブル景気かしら)を迎え…という時代、母国を離れた国で送る生活は、どこか息苦しい青春のもどかしさ、そして懐かしさを感じます(私自身ほぼ同じころドイツに住んでいたからでしょうか)。様々な人々が登場してきますが、塩田千春の描く赤い糸は、主人公とその登場人物たちを結ぶ糸。展覧会でみたたくさんの挿絵は、単行本になると掲載されませんが、できたら一気に観ることのできる本にして欲しい!そして、本文と照らし合わせながらじっくり両方を味わいたいと思います。

2026年3月23日月曜日

本:『帰れない探偵』柴崎友香(講談社)

『帰れない探偵』柴崎友香(講談社)
とっつき難い出だし、でも読み進めるとどこか知っているようで知らない世界が広がり始め、思わずあたりを眺め渡したくなる小説です。新聞やネットで見聞きする今の世界の情勢、歴史、これからの歩み…そういう「歴史」の方で個人が歩むハードボイルドな体験でしょうか。推理小説として読んでも面白いと思います。気になる作家さんです。

2026年2月17日火曜日

本:『あのころの僕は』小池水音(集英社)

『あのころの僕は』小池水音(集英社)
5歳のころの記憶を高校生の「僕」が語るというスタイルの小説。遠い記憶なのに、まるで静かな鏡のような湖面を通して眺めるような表現が素敵です。有名なゲームにまつわる記憶も語られますが、それもうっすらと靄がかかったよう。「ブルーモーメント」が母との記憶につながる場面は美しいです。これからも書き続けてくださいね。

2026年2月9日月曜日

本:『めざせ!ムショラン三ツ星』黒栁桂子(朝日新聞出版)

『めざせ!ムショラン三ツ星』黒栁桂子(朝日新聞出版)
ドラマ化されるというので、借りました。面白かったです!毎日の食というのは、誰にでも必要、そして「食育」っていう言葉の奥深さも感じました。それにしても、「予算」の少なさにびっくり!その工夫に拍手!!!グルメとは違う食の豊かさを思います。ぜひ、多くの人に読んで欲しいですし、職業としての栄養士さんにも理解を深めたい!

2026年2月8日日曜日

本:『サイレントシンガー』小川洋子(文藝春秋)

『サイレントシンガー』小川洋子(文藝春秋)
小川洋子さんの作品は、できるだけ読むようにしています。今回の物語は久しぶりの長編・読み始めた時、主人公の名前がカタカナだったので、「もしかすると外国か架空の国が舞台?」と思ったのですが、神戸を連想するところだと判り…ほっとしました。主人公は、修道院のような「沈黙」を大事にする「野辺」と隣り合っている家に住む少女。遠くから流れてくる誰ものでものない声の響きが、読むほどに心に強く響いてきます。そして、「歌は、皆で分かち合うためのものなんだ」という言葉がずっと通奏低音のように物語の中に流れています。「物語も、皆で分かち合うもの」と思う、今日この頃。この小説を多くの人に読んでもらいたいと思いました。

2026年1月14日水曜日

本:『仏果を得ず』三浦しをん(双葉文庫)

『仏果を得ず』三浦しをん(双葉文庫)
映画「国宝」で歌舞伎人気が爆上がり、文楽もなんとかしなければ!と話していたら友人が「『仏果を得ず』の映画化はどうでしょう?」と言ってきました。ということで拝読。うん、これは映画というより、NHKの連続ドラマですね、章立てもそれぞれ出し物に合わせて8章になってるし。文楽作品もしっかり理解できます!火曜日または日曜日にやって欲しいです。関西らしい明るさもあるしね。期待してまーす!!!

本:『胡蝶殺し』近藤史恵(小学館)

『胡蝶殺し』近藤史恵(小学館)
近藤さんのミステリーは好き。そして歌舞伎モノも面白いですよね。映画「国宝」で、歌舞伎の人気もうなぎ上りなのでしょうが、基本、歌舞伎を題材とした小説は、芸が絡むせいか、どこか普通の小説より濃いというか宿命っぽくなります。2014年に出版されたこの本もそう。38P『才能というのは、逆らいがたい濁流のようなものだ。本人が望む、望まぬにかかわらず、人を絡めとって離さない。「才能はあるが、努力が足りない」などと、したり顔で言う人がいるが、本当の才能というのはそんな単純なものではない。努力せずにいられない衝動を含めて、才能というのだ』183P『才能は渇望だ。踊りの才能のある人は、どうやっても踊ることをやめられないのだ』、というくだりは、とても深い。踊りに限らず、「才能」とはそういうものなんだと思います。でも「破滅」ではなく「夢の実現」に向かうこの物語は切なく甘やかです。

2025年10月27日月曜日

本:『スクープのたまご』大崎梢(文藝春秋)

『スクープのたまご』大崎梢(文藝春秋)
こちらもドラマになっているようです。週刊誌の取材のあり方が詳細(?)に描かれているらしい。こちらもさらっと読めました。なるほどね、大変なお仕事です。2016年出版の本ですが、それから10年弱、メディアもネットというモノが力を持つようになり、時代の変化の速さを感じます。これから世界はどうなっていくのでしょうか?

本:『終活シェアハウス』御木本あかり(小学館)

『終活シェアハウス』御木本あかり(小学館)
ドラマになりました。中々面白い小説ですが、やっぱりオバサマ達が社会的には恵まれているのが…気になるかも…、出てくるお料理は美味しそう!さらっと読むにはいいと思います。登場人物のキャラは立ってますよ。

2025年10月16日木曜日

本:『兄の終い』村井理子(CCCメディアハウス)

『兄の終い』村井理子(CCCメディアハウス)
とても仲の良い兄弟・姉妹は多くいます。そして反対に小さいころから仲が悪かったり、折り合いの着き難い兄弟・姉妹も多くいます。「兄弟は他人の始まり」という言葉もありますが、どうなのかしら?この兄と妹は、語りだせばその生きてきた時間を費やすくらいの事が多くあったのでしょう。読んで一番初めに思い出したのは佐藤愛子の『血脈』でした。どうにも分かり合えない人間関係というのは、他人ならば「かかわりを持たない」として離れることが可能ですが、家族はそうはいかない…著者は結構淡々とかいていらっしゃいますが、もっといろいろ考えることがあったと思います。兄弟の数が減っている現代、考えさせられました。映画になるそうですが「いいはなし」にしは欲しくない。

2025年10月12日日曜日

本:『渚の蛍火』坂上泉(双葉社)

『渚の蛍火』坂上泉(双葉社)
WOWOWでドラマ化される原作本。現在上映中の『宝島』と同じ沖縄返還時代を舞台にした物語ですが、主人公は警官。実は『宝島』は読むのに挫折…したので、こちらはどうかしらと思ったのですが、こちらはミステリーとして読むことができました。そして『宝島』同様辛い物語でした。

2025年9月26日金曜日

本:『コーチ』堂場瞬一(創元推理文庫)

『コーチ』堂場瞬一(創元推理文庫)
秋ドラマの原作ということで読んでみました。警察を舞台としていますが、事件を解決する力を養う物語です。あまり重くならず読めるのが魅力。続編も期待!

2025年9月13日土曜日

本:『百年と一日』柴崎友香(筑摩書房)

『百年と一日』柴崎友香(筑摩書房)
33の短編が収められている小説集。粗筋のような表題が並んでいますが、どれも興味深く、そして身近な感じがする。「ここではないどこか」らしいのだが、もしかすると私の町でも私の親戚でも友人でも起こっている出来事なのかも…と思ってしまいました。この方の作品は初読かな?もっと読んでみようかと思います。

2025年9月2日火曜日

本:『生命活動として極めて正常』八潮久道(KADOKAWA)

『生命活動として極めて正常』八潮久道(KADOKAWA)
『本の雑誌』紙上で「第1回〈北上次郎「面白小説」大賞〉受賞作」として選ばれた作品。確かに面白いです!ネットで発表された短編をまとめて単行本にされたとのこと。ワンアイディアというか、一発芸的な作品もありますが、面白いです。『本の雑誌』紙上で評された2作品はとても斬新というか、この路線で攻めていってほしいと感じます。新人、がんばれ!

2025年8月27日水曜日

本:『大きな鳥にさらわれないよう』川上弘美(講談社文庫)

『大きな鳥にさらわれないよう』川上弘美(講談社文庫)
ブッカ―賞の候補になった作品。確かにブッカー賞的な作品です。はじめは短編集かと思ったのですが、短編連作で長編になっている作品です。川上さんらしいSF的な設定ですが、初源的な問いかけを扱っているように思います。うまく言葉にできないのですが、私たちはどこから来てどこに行くのかということでしょうか。抒情的でありながら理性的。いいですよね、この物語。もう一度ゆっくり読み返したいと思います。

2025年8月15日金曜日

本:『ババヤガの夜』王谷晶(河出文庫)

『ババヤガの夜』王谷晶(河出文庫)
英国のダガー賞翻訳文門受賞作。これは「映画」になりますね。作者自身映像を意識して書いたとどこかで述べられていました。スピード感、そして目に浮かぶような描写と身体にズンとくるような圧力。それでいながらどこか遠い世界の出来事のような非現実感…。とても面白い。短くまとまっているのも余韻があっていい。大友克洋と荒木飛呂彦の漫画の世界です。そして「シスターフッド」の信頼感。40年の流転生活は描かれないけれど、きっと安らかで心穏やかな日々だったと感じることができます。

2025年8月7日木曜日

本:『記念日』青山七恵(集英社)

『記念日』青山七恵(集英社)
書評を読んで図書館で予約を入れたような…かなり待たされたので「予約したきっかけ」を忘れてしまいました。ということで読みましたが…。文章はうまいと思うのですが、登場人物に感情移入できないというか、自分の中にない特性を持った人々ばかりで、理解に苦しみました。後味は悪くないので、この作者のはまた読むかも…?