2025年2月17日月曜日

本:『ミーナの行進』小川洋子(中公文庫)

『ミーナの行進』小川洋子(中公文庫)
小川洋子さんの作品は、どこか御伽噺のような憧憬の雰囲気があります。この作品は、アメリカ『TIME』誌で2024年の必読書100冊に選ばれたとのこと。いわゆる「ベストセラー小説」が持つ「山あり谷あり」「勧善懲悪」「幸福と不幸の連鎖」が訪れそうで訪れず、少しのざわめきの中で物語が進んでいきます。最後に語られる「悲しみ」も、どこか穏やかで不思議な暖かさを感じさせます。その中で「マッチ箱」の持つ意味は何だろうと考えさせられます。マッチと言えば、マッチ売りの少女。でもミーナもトモコも、極貧ではなくどちらかと言えば豊かな生活を送る少女たちで、マッチ売りの少女が窓越しに眺めたお屋敷の中の人々。そこがこの小説の「浮遊感」を感じさせるところでしょうか。とにかく、読み終わると幸福感に包まれるのです。マッチ箱、瓶詰ジュースのフレッシー、図書館、そしてミュンヘンオリンピック…。思い出が未来を生きる力になるのです。

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