2011年1月2日日曜日
本:「エルニーニョ」(中島京子講談社)
『エルニーニョ』中島京子著 講談社
12月に東京駅丸善で見かけ、「あ、中島さんの新作だぁ」と思い、その表紙の絵の可愛らしさにズキューンとなった本。年末に近くの本屋でゲット。昨日・本日で読みました。
『小さいおうち』を読んだ時も思ったのですが、この方、子どものころから読書好きだったんでしょうねぇ。それが嫌味でなく物語のあちこちを彩っているのが素敵です。
演歌の世界では逃避行は「北」になりますが、この物語は南への逃避行(?)。『メタボラ』(桐生夏生)も沖縄を舞台にしていますが、日本文学でも、南に行く話は南米文学のようなめくるめく入れ子世界の不思議さを感じます。この『エルニーニョ』もそう。悲惨な感じはなく、どこか失われた楽園めぐりの色合いがあるのです。自由、自分自身で見出す価値、前向きな作品です。
でも、年末に集中的に見たNHKBShi子どもシリーズを見て感じたことですが、ひとつの価値観から抜け出すのは容易なことではない。特に子供のころ核になるような「拠り所」を持たないと「出発」すら難しい。
主人公「テル」が砂糖屋ですぐに「営業」の姿勢を取れるのは、なんやかんや言って、彼女が日本の平均的教育を受け、それなりに平穏な家庭(たとえマイナス思考の家庭であっても)で育ったからなんだと痛感。「少しのマイナス」を「少しのプラス」に変える勇気が大切というメッセージは貰えますが、「身を削る決断」というには至らない。
それだけ日本は平和で幸せなんでしょう。
挿入されている「覚書」はどれも面白いですが、〈サント・ニーニョ〉の話が私は一番好きです。
この作品、絶対「ロードムービー」になるよね!
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