2021年12月1日水曜日

本:『ある男』平野敬一郎(文藝春秋)

『ある男』平野敬一郎(文藝春秋)
まず、「上手い」です。ちょっとミステリー風に進めながら、しっかり人物を想像できる形に仕上げている。読者は、途中で飽きることも、物語を疑うこともない。語り手は、多面的に世界を見せてくれるわけですが、その視点は移り変わっているけれどぶれないというところで、読者はしっかり「世界」に入っていけるのだと思います。私個人としては、登場人物の誰にも気持ちを預けることは無いのですが-肩入れすることがない-、この物語世界をしっかりと見つめることができるのです。文章力・構成力がすごいのでしょう。ただ一つ、最後はちょっと「泣き」が有るかなぁ…。でもそれくらいの温かさは必要なのでしょう。

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