2024年11月1日金曜日

本:『サード・キッチン』白尾悠(河出書房新社)

『サード・キッチン』白尾悠(河出書房新社)
言葉・文化の違う場所で暮らすことの難しさは、それを経験したことのある人にはよくわかることではないでしょうか。20世紀末のアメリカを舞台としたこの作品は、それをよく表しています。最初の70ページくらいの主人公の戸惑いは、かなりつらいですし、出てくる同級生たちも半分透明というか、よくわからない。それが「サード・キッチン」が登場することで、段々と戸惑いの理由が明確になってくるし、登場人物も輪郭がはっきりしてきます。そこがこの小説の面白さでしょうか。この「分かり合えること」「それぞれの立ち位置を理解すること」は、同じ国も人間でも難しいことですし、一見「わかった」と思っても、根本的なところでは間違っているかもしれない。「みんな違ってみんな良い」という言葉が流行ったりしましたが…、そんなに簡単なことではないですよね。自戒をこめて。

展覧会:「宇野亞喜良展」刈谷市美術館 10月30日(水)昼

「宇野亞喜良展」
イラストレーター宇野亞喜良さんの展覧会に行ってきました。多くのお仕事をなさっていることにびっくり。そして、一貫したスタイルにもびっくりしました。職人技とも思えます。10年くらい前、メリーゴーランドでお客さんの前で描かれたことがあったのですが、下絵でしょうか、スケッチ片手に仕上げていかれた姿を覚えています。端正な計算のもとえがかれるんですよね。まさに「仕事」だと思いました。
お若い頃のお仕事「珈琲エーデルワイズのための室内装飾だそうです。珍しい油彩です。
コクーン歌舞伎のポスターも宇野さんだったのですね。
「母の友」も!
立体作品は、お芝居のための作品
「せむしの子馬」の挿絵。ロシア的です。
開場入口