2011年11月16日水曜日

本:『ピエタ』大島真寿美(ポプラ社)


半年ほど前、本屋さんの店頭で表紙を見て気になった本。作者は良く知らなかったのですが、「yom yom」に載った短編は好きでした。図書館で予約。
結構好みの小説ですが、ストーリー的にはかつての少女マンガ的要素が多くあります。あまり多くを語らず、それでいて深いところで繋がっている友情なんかがね。主人公を始め、登場人物の存在感がすべて紗がかかったように「うすい」-多分意図的-。その中、既に死んでいる人のみが輝く。アドリア海の奥に位置するヴェネツィアの海に立ち込める靄に浮かぶ幻想…。そんな印象です。
物語の中で重要な位置を占める音楽家ヴィヴァルディは、音楽を学ぶ人間には馴染み深い人ですが、その人となりを扱ったものをしっかり読んだことはありませんでした-映画「レッド・ヴァイオリン」にちょっこっと出てきた-。重要なモチーフである〈l'estro armonico〉は、娘もさんざん弾いた曲ですですが、この小説を読んでから聴くとまた違った思いが湧き上がるかも。
ピエタというのは主人公たちが育った慈善院の名前で実在した施設ですが、「ピエタ」はイタリア語で「慈悲」「愛憐」を意味し、美術では「キリストの死体を抱え哀悼するマリア」の像を指します。主人公を始め登場する多くの女性たちは、ヴィヴァルディの死を心に抱き、哀悼のうちに歳を重ねているのでしょうか。

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