『晴子情歌 上・下』
『土の記』が面白かったので、高村薫純文学3部作に挑戦。ということで、まずは『晴子情歌』。青森と北海道を舞台にした大河ドラマといえば良いのでしょうか。
大正9年に東京の本郷で生まれた晴子は15歳の時母の死によって父の実家青森へ。そこから始まる北の海での暮らしが、息子への手紙という形で物語られます。合間に入る昭和21年生まれの息子彰之の物語は、母の手紙を読みながら進む。
戦前が中心となる晴子の物語はまさに「大河ドラマ」。団塊の世代に属する彰之の物語はどこかむなしさが付きまとう。その間を埋めるのが、彰之が船員仲間から聞く戦争や労働争議の話となるのでしょうが、ちょっと盛り込みすぎというか、できれば、「家族」に特化して話が進む方が…と思ってしまいました。特に、晴子夫婦の有り方をもっと深めて書いてもらえればと思います。「青い庭」だけでは…ですし、これをもっと描いて欲しいものです。
続編の『新リア王』『太陽を曳く馬』も読まなくっちゃ!
ところで、単行本の時の表紙は青木繁の「海の幸」。青木って九州出身だし、「海の幸」は千葉で描かれた絵。この絵を表紙に使いたかったとのことですが…。文庫は写真に変わっています。でも確かに情念というか内容に合っているのは「海の幸」でしょうか。
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