『小さいおうち』(中島京子 文藝春秋)
新聞書評で紹介された時から、気になっていた本でした。私の愛読雑誌「本の雑誌」でも取り上げられ、そして直木賞受賞。
装丁も気になる・・・・。でも買うべきか買わざるべきか・・・、図書館では○○番待ち??
ついに今週の「週刊ブックレビュー」での作家本人のインタビューを見て「買い」を決心。
ところが、なんと、1番近くの本屋には無い!!!!!どうして????重版かかっているはずでしょう?
でも、店頭に無い・・・・・・・・。
仕方なく、町中に出る日まで待ちました。そして、漸く昨日ゲット。
これは面白いです。設定が面白い。語られる東京の山の手の暮らしが面白い。
主人公の“女中さん”が最初に勤める小説家の家があるところが、個人的にとても懐かしい所なのもグッときました。
「優れた女中」というくだりは、「優れた執事」をはじめとする「奉仕する人のあり方」を考えさせられますし、「恋愛」についても、いろいろ考えます。
その意味では、『日の名残り』(カズオ・イシグロ)を連想しました。
作家ご本人は、インタビューを聞く限りでは、とても「まともな方」という印象。物書きによくある「自己陶酔」的なところが無く、バランスの良い人という印象です。きちんと取材して書かれるタイプなんだと思いました。
戦争前夜の家庭を描くというと向田邦子の作品がありますが、それよりももっと個人的な狭い世界でありながら、時代を超えた個人の思いが溢れます。
同じ時代を扱っても、視点が変わると全く違った世界が見えてくるというのは、嘗て映画で思いました。
「ローザ・ルクセンブルグ」「マルセルの夏」「1900年」、
この3本の映画では“1900年”がキーワードになってるのですが、
「ローザ」では革命を取り巻く社会の変革と軋轢が描かれ、
「マルセル」では南仏の美しい自然に囲まれた家族の暖かい生活が描かれ、
「1900年」ではイタリアの土地に根ざした人々の葛藤が描かれていました。
同じ“1900年”なのに、全く違う世界なのでした。
人生は多彩であり、人はそれぞれ人生に誠実であり、その眼差しは何を一番大事に見つめるのだろう?
「小さいおうち」でも、主人公が1番大事にしたかったのは?
わが身に引き寄せ、それを思います。
それはさておき、昨年より気になっているフードスタイリスト飯島奈美の作る料理と同じように丁寧に作られるこの本に登場する数々の料理は、とても美味しそうです。
料理に代表される家事全般、嘗ては時間を惜しまず手をかけて丁寧にされてたんですよね。
ちょっと、反省・・・・。
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